文字とは、かくも美しきものか。

京極夏彦作品の読者の多くは「陰摩羅鬼の瑕」以降、幾つかの作品で、使用された書体名がクレジットされている事をご存じだろう。

これらの書体は「字遊工房」という書体デザイン工房で作られている。是非、こちらのサイトを見て頂きたい。シンプルなデザインをベースにして描かれる、文字、文字、文字。けして奇をてらったデザインではない。明朝体、ゴシック体、教科書体。どこでも目にする書体ばかり。それらはただ、読みやすく、美しい。機能性を追求したデザインとはかくも美しいものなのか。

この工房では、書体の「見本帳」を作成している。こちらでサンプルを見ていただくとよくわかるが、これらを見るとその美しさと、制作者のこだわりが伺える。かつてこれほどまでに美しい書体見本があったであろうか。是非とも、手にしたいものである。

ところで、文字にこだわるといえばあるゲームを思い出す。アトラスの「真・女神転生III NOCTURNE」「デジタル・デビル・サーガ1、2」では、Fontworksという書体制作会社名がクレジットされている。他のゲームと比べてみればよくわかるが、これらのゲームの文字は読みやすく、そして、美しい。

いままで、あまり注目されることの無かった、標準的な書体たち。いつまでもMS明朝なんて使っていないで、こだわりの書体を使ってみたいものだ。

(※ちなみに、京極作品でクレジットされているのは「ヒラギノ明朝W3」「遊築五号W3」「ヒラギノ行書W4」。以上、ダ・ヴィンチ(2003年9月号)より)