図書館とゲーム。

米国図書館協会(ALA)が、2008年11月15日を「図書館でゲームをする日(National Gaming Day @ your library)」と定めました。全国の図書館で同時オンラインゲーム大会を催すほか、ボードゲーム出版社が全国の図書館に寄贈してくれるボードゲームを使い、各図書館内での大会を催すよう促すとのことです。ウェブサイトには、ALAがなぜ、図書館でゲームをすることを推進しているかを、以下のような疑問に答えるという形で説明しています。 11月15日は「図書館でゲームをする日」(米国) | カレントアウェアネス・ポータル カレントアウェアネス・ポータルを見てると、アメリカの図書館で、ゲーム、それもビデオゲームを取り入れる動きが多い。割とコアなゲーマーである私から見ても「図書館にゲーム?」とちょっと疑問に思っていた。

上記記事の元記事「I Love Libraries - National Gaming Day @ your library」で、「なぜALAは図書館でのゲームを推進するのか(Why is the American Library Association promoting gaming in libraries?)」を、Q&A形式で簡潔に書いてくれてあるので、要訳(超訳?)する。なお、質問文の訳は上記記事より引用している。


1. 図書館は本と読書の場所ではないのですか?

現在の図書館は本のためだけのものではありません。CDやDVD、その他の電子的/オンラインリソースと同様に、ゲームは図書館のサービスの一環を担うものです。

2. テレビゲームは一時の流行ではないのですか?

ゲームはすでに30年以上にわたってポピュラーでありつづけています。0〜40歳代はゲームとともに成長してきましたし(ゲーマーの平均年齢は35歳!)、それ以上の世代も以前よりゲームをするようになっています。

3. なぜ子どもは図書館でゲームをすべきなのですか?

図書館は安全で非営利な場です。図書館において、子供は友達と社交的になり、本やライブラリアン、知識に囲まれた環境でゲームをすることとなります。図書館でビデオゲームをプレイすることは、多様な仲間に興味を持たせ、専門技術を他の人たち(大人も含む)と共有し、ゲームと学習のための新たな戦略(strategy)を開発させるのです。

4. ライブラリアンはどのように、子どもにふさわしいテレビゲームを選んでいるのですか?

図書館で購入するゲーム、「ファミリー・フレンドリー」か検討されます。ゲーム選びにはESRB(娯楽ソフトウェア審査委員会)がガイドとして使用され、ライブラリアンはおすすめのゲームについて、子供たちに紹介する前に、広範囲にしらべ、プレイします。図書館で使うのに、おすすめするゲームは、社会的な要素、人々がともにそのコンテンツを囲むような、他の人とプレイしたときにより楽しい体験ができるような要素を持っています。

5. 図書館でゲームをすることで、子どもは何を学ぶのですか?

ビデオゲームは子供たちに、図書館の安全な環境で、読み書きやコンピュータの使い方を練習する機会を与えます。ポピュラーな(本当に子供たちが好んでプレイする)ビデオゲームは直接的に興味を惹かせ、成功や「レベルアップ」のために勤勉にさせます。これらのゲームをプレイする間、子供たちは恒常的に新しい戦略を開発し、実現可能な結果を予測し、複数のリソースを管理し、地図を解読し、複雑な統計を追い、ますます難しいレベルへと適応してゆきます。彼らは基本的な読解を越えた、メディアリテラシーを学ぶのです。


1.2.は旧来的な図書館の機能(資料のアーカイブと提供)から、3.4.5.は子どもたちのコミュニケーションと学習の場としての図書館の機能からゲームを見ている。

1.2.はまあ当然っちゃ当然の話で、ファミコンのカートリッジコレクションがオークションに出品されたなんて話を聞くと、これは図書館が買うべきだろ!などと思っていた。早くしないと二度と収集できないぞ。

で、まあ最近の動向のキモは3.4.5.で言ってるような、場としての図書館の話だろう。たしかに、自分の身を振り返ってみても、ゲームを通じて友達(いつもはあまり遊ばない子も含む)と遊んだり、漢字や効率的な戦略の立て方なんかを学んだ経験があるし、演出や音楽から受けた感動は今でも影響を残している。今の世代でも、道ばたでDSを持ち寄って遊んでたりするし、DS鬼ごっこ(一次ソースはリンク切れ)なんて創造的すぎる。

しかしゲームには、暴力的な内容を過剰に含んでいたり、時間やその他のリソースを割きすぎてしまうおそれもあるため、それを図書館というある程度のコントロールが可能な場で提供するというのは、うまくやれば非常におもしろそうな話である。日本でそのままできるかはともかくとして。


で、結局どんなゲームが選ばれてるんだろう。リストとかないのかな。二次戦ものFPSのマルチプレイ(ようはリアルな戦場を舞台に実在の兵器で撃ち合うわけです)とかだったら笑う。「地球防衛軍」の二人プレイなんかはめちゃくちゃおもしろいけど、公共の場でやるもんじゃないな。そうすると結局、アナログゲームやそれのビデオゲーム版(桃鉄とかね)が無難だろうな。モノポリーなんてちょうど良さそう。

補記(2008/11/24)

全米「図書館でゲームをする日」が終了 - 日本でも山中湖情報創造館が実施 | カレントアウェアネス・ポータル」によると、全米トーナメントが行われたゲームは「Rock Band」「ダンスダンスレボリューション」「大乱闘スマッシュブラザーズ」の3つ。Rock Bandは日本未発売だけど、まあギターヒーローとかと同系統のもののようです(参考:ロックバンド (音楽ゲーム) - Wikipedia)。やっぱりみんなで盛り上がれるようなゲーム揃いですね。

また、同記事からリンクされている「丸山高弘の日々是電網 The First. : 図書館でゲームをする日 (GAMING DAY)」では、「なぜALAは図書館でのゲームを推進するのか」の全訳があります。