前項で、Amazonの商品紹介ページから、図書館の蔵書を探す方法を紹介したが、考えてみると、これはすなわち、Amazonが本を探す際のポータルになっていることを示している。図書館はWebサイトやOPACを作り、本(を含む情報)を探すためのポータル作りをやっているところもあるが、それをさしおいてAmazonがその役割を果たしているわけだ。私も普段、本を探し、入手する課程でAmazonを利用する機会は多い。そこで、Amazonで本を探しやすい3つの理由を考えてみた。1.表紙画像の存在ネットで本を探す場合、立ち読みができない、という点が一番の障害となる。そんな中、表紙だけでも画像が見られることは、その本の雰囲気をつかむ上で、わずかなりとも手助けとなる。図書館などがつくるポータルでは、こうした画像は圧倒的に少ない。Amazonでは表紙以外の画像が見られる場合もあり、さらに大きな手助けとなる。画像の存在は、単に合理的な要求から必要とされるものだけではなく、ユーザーの「感情」を左右するものとしても重要である。同じ情報でも、文字だけのものより、画像や視覚的デザインを含んだものの方が見ていて楽しく、「ついつい」使い続けてしまうものだ。2.ユーザからの暗黙的情報の利用Amazonを見ていて驚くのが「おすすめ商品」だ。しばしば、自分の持っている(一見、無関係な)商品をすすめられる事から考えて、おすすめ商品の選出はかなり的確である。これらは、推察するに、1人のユーザが購入・チェック・ウィッシュリストへ登録した商品のデータと、すべてのユーザについてそれらを集積したデータをつきあわせて、相関性の高いものを選出しているのであろう。これは、Amazonのみが持っているデータであり、他サイトでAmazonほどのデータを集積するのは容易ではない。3.ユーザからの明示的情報実は、個人的には、これが一番本選びに強い影響を及ぼすと考えている。Amazonでは、個々の商品ページに、その商品に対するユーザからのレビューが掲載されている。また、「リストマニア」として、ユーザが特定のテーマ等を設定し、ユーザが選んだ商品を、レビュー付きで紹介することができる。当然リストマニアと個々の商品ページは相互にリンクしている。MARCの内容紹介などとは違う、率直で主観的な評価。また、本の主題ではなく、特定の目的や、趣向から選んだリスト。これこそが、本を選ぶ時にもっとも重要な情報源となる。(もっともレビューの質は玉石混淆であるから、その点は留意しなければならない。また、このことが、公的なプロジェクトに導入できない理由でもあるのだろう。)見てみると、Amazonで本が探しやすいのは、洗練されたシステムに加え、長年大手ショッピングサイトとして蓄積してきたデータが大きな強みになっていると考えられる。しかし、それを言うなら、図書館だって長年情報を提供してきたノウハウも顧客(利用者)もあるのだから、あきらめるのは早い。利用者に貸し出した本の感想と評価を書かせ(プレゼントでもつければよかろう)、蓄積・公開するだけでもずいぶん違うだろうし、利用者におすすめの本を選ばせるのもおもしろい。大学図書館なら、各分野の名著を教員にきいてまわるのも効果があるだろう。Amazonに追いつけ追い抜けでいろいろやってみてほしいものだ。
追記:ところで、Amazon等営利団体のサイト以外で、本を探す場合に、おもしろいのは国立情報学研究所(NII)のWebcat PlusとNPO法人・連想出版の想-IMAGINE Book Search(あるいはWebマガジン「風」から)である。どちらもキーワードのシソーラスを使った「連想検索」が大きな売りである。前者は、大学図書館の蔵書情報と連動しているので、Amazonに無いような少し古い文献があり、全国の大学図書館の蔵書状況も確認できる。後者は、もともと新書専門の「新書マップ」をやってたとこが、新書マップ・Webcat Plus・Wikipediaなどの統合検索システムを作ったらしい。新書マップは、新書だけに限定しているが、表紙だけでなく「背」の画像を持っていたり、インターフェイスが独特だったりと、なかなかおもしろい。ちょっと使ってみただけだが、Webcat Plusとの連携は効果的な感じだ。