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Chapter.5: 調1 – 基本

調(ちょう)です。「ヘ長調」とか「変ホ短調」とかの調です。
昔、私は調がさっぱり理解できなかったんですが、それは音階を知らなかったからです。
音階がそれなりに理解できていれば調も理解しやすいと思います。

単純に言えば調とは「どの音階を使っているかを表すもの」です。

しかも、自然的〜とか和声的〜とか関係なく、長音階か短音階かの二つだけ。
長音階を使っていれば「長調(ちょうちょう)」短音階を使っていれば「短調(たんちょう)」です。簡単ですね。

じゃ、長調や短調の前についてる「ヘ」とか「変ホ」は何でしょう?
どうやら日本語音名らしきことは気づくと思います。
これは音階の主音(第1音)がなにか、を表しています。

音階の項では原則として、主音(第1音)をすべて「ド」の音にして説明していましたが、もちろん主音を別の音にすることができます。
たとえば主音をレ(日本語音名では「ニ」)にしたなら、ニ長調またはニ短調となるわけです。簡単簡単。

ところで、ドイツ語で長調は「dur(ドゥワー)」、短調は「moll(モール)」と呼びます。クラシックではこの呼び方もよく使う。
また、英語では長調は「major key」または「major」、短調は「minor key」または「minor」と呼びます。ポピュラー音楽では一般的な呼びかたです。
あと、慣用的にドイツ語で調名を書くときは、主音を、長調なら大文字で、短調なら小文字で書くようです。

調の書き方の例
日本語 英語 ドイツ語
ハ長調 C major C dur
ロ短調 B minor h moll
嬰へ長調 F sharp major Fis dur
変ト短調 G flat major ges moll

さて、この譜面を見てください。

ミを主音とする自然長音階(調号なし)

これはミを主音とする自然長音階です。
みればわかる通り♯が4つもついています。
これで譜面を書いてたら、書く方も読む方も大変です。
ならばほぼ毎回つく♯や♭は省略してしまおう、ということで生まれたのが「調号(ちょうごう)」です。

ミを主音とする自然長音階(調号あり)

ト音記号のすぐ横にある♯4つが調号です。
この譜面はさっき挙げた譜面と同じように演奏されます。

なお、調号は楽譜の段が変わる毎に必要です。

ドを主音とする自然長音階

この譜面はド(日本語音名でハ)を主音とする自然長音階です。
♯も♭も一つもついてませんね。よってハ長調には調号が不要です。

さて、こんどは主音をドの完全五度(半音7コ)上のソにしてみましょう。

ソを主音とする自然長音階

♯がファについています。ということはト長調の調号は♯1つです。

次はソの完全五度上のレを主音にしてみましょう。

レを主音とする自然長音階

♯がファとドについています。ニ長調の調号は♯2つです。

同じように、主音を完全五度づつ上げていくと、♯が1つづつ増えていきます。
♯がつく順は、ファ・ド・ソ・レ・ラ・ミ・シです。
♯がつく位置も完全5度上・完全5度上・・・となってます。
(オクターブを無視すれば完全5度上=完全4度下です)

今度は逆に主音を完全5度下げてみましょう。主音はファになります。

ファを主音とする自然長音階

今度は♭がシについています。よってヘ長調の調号は♭1つです。
さらに完全五度下のシを主音にしてみましょう。

シ♭を主音とする自然長音階

シとミに♭がついていますね。よって変ロ長調の調号は♭2つです。

主音を完全5度下げていくと、♭が1つづつ増えていくわけです。
♭がつく順は、シ・ミ・ラ・レ・ソ・ド・ファです。
やはり♭がつく位置も完全5度下・完全5度下・・・となってます。
(オクターブを無視すれば完全5度下=完全4度上です)

これらの関係を簡単に表したのが、この図です。

時計で12時の位置が、ドを主音とする場合(ハ長調)で、調号はありません。
で、時計回りに一つすすむと、調号の♯が一つ増えるか、♭が一つ減ります。
反時計回りに一つすすむと、調号の♭が一つ増えるか、♯が一つ減ります。
この「1つ」の幅が「完全5度」なので、この図は「五度圏(ごどけん circle of 5th)」と呼ばれます。
こんなん覚えられるか!と思うかも知れませんが、日本語音名で右回りを「トニイホロヘハ」、左回りを「ヘロホイニトハ」と覚えると覚えやすいです。

五度圏を見ると、ドとレ、ファとソ、シとドが、それぞれ同じ位置にあります。
これらの音を主音とする調は、調号は違えども同じ音を使用します。
一方でファを、もう一方ではソを使ったりしますが、これらは「異名同音(呼び名は違っても同じ音とみなす)」です。

さて、これまで長調の場合のみ話してきましたので、短調の話を。

この譜面はラ(日本語音名でイ)を主音とする自然短音階です。

ラを主音とする自然短音階

♯や♭が1つもついてませんね。
短調ではイ短調が基本になります。

調号は、自然的短音階用につけます。和声的短音階や、旋律的短音階を使用する場合は臨時記号(♯、♭、ナチュラル)を使用します。

こちらもやはり、主音を完全5度上げると♯が、下げると♭が一つづつ増えていきます。
短調版の五度圏がこちら。

最終的には長調版・短調版の五度圏を重ねたものを使います。
その場合、同じ位置にある調は調号が同じ(使う音が同じ)になります。
(たとえばハ長調とイ短調はどちらもドレミファソラシドの音を使う)

調号の書き方には規則があります。適当に書いちゃだめです。

  1. ♯や♭が増える順に右に書いていきます。
    ♯はファ・ド・ソ・レ・ラ・ミ・シの順で左から書いていきます。
    ♭はシ・ミ・ラ・レ・ソ・ド・ファの順で左から書いていきます。
  2. さらに♯や♭をつける(上下の)位置も決まっています。
  3. たとえば、この二つの譜面。

    ト長調またはホ短調の調号ト長調またはホ短調の調号(間違い)

    どっちもファに♯がついてるんだから、どっちでも良さそうなものですが、正しいのは左側です。
    この辺は慣例的なものなので、覚えるしかないでしょうね。
    一覧を載せておきます。
    調号一覧

    さて、調号をみれば調が解ります。

    調号が♯の場合
    調号の一番右の♯のついてる音の、2度上(楽譜上で1コ上)の音が主音の長調か、2度下(楽譜上で1コ下)の音が主音の短調です。
    主音のところに♯がついてたら、主音にも♯がついています。

    調号が♭の場合
    調号の一番右の♭のついてる音の、4度下(楽譜上で3コ下)の音が主音の長調か、3度上(楽譜上で2コ上)の音が主音の短調です。
    主音のところに♭がついてたら、主音にも♭がついています。

    調号一覧を見ながら、試してみてください。
    ちなみに、ある長調と、その長調の主音の短3度(半音3コ)下の音を主音とする短調は、同じ調号です。たとえばソ(日本語でト)の短3度下はミ(日本語でホ)。ト長調とホ短調は調号が同じですよね。

    調の話はわりと簡単だったと思います。
    調号の書き方はややこいですが、自分で書いて見る分には適当でもいいので、覚えなくてよいかも。

    ほんとは転調の話もすべきでしょうが、それは和音の話の後にしましょう。