ペンギンラボ for music and informatics

Column: 倍音列

音律1で、ある音の周波数が整数倍の音を重ねるとよく響く、と書きました。
音律1では、2倍と3倍を中心に話を進めましたが、当然、5倍、7倍の音もよく響きます(ただし、数字が小さいほどよく響きます)。

倍音列(ばいおんれつ harmonic series)とは、ある音=基音を基準にその整数倍の音を順に並べたものです。
この倍音列の中に含まれる音程が西洋音楽の基礎となります。

倍音列

これがドを基音とした倍音列です。数字は基音の何倍音かを示しています。9倍音以上は省略しました。
それでは、この倍音列に含まれる音程を見ていきましょう。

音律1でも見たように基音(ド)と2倍音(ド)との音程は1オクターブ、つまり完全8度(周波数比1:2)です。

2倍音(ド)と3倍音(ソ)との音程は完全5度(2:3)です。
3倍音(ソ)と4倍音(ド)との音程は完全4度(3:4)です。

4倍音(ド)と5倍音(ミ)との音程は長3度(4:5)
5倍音(ミ)と6倍音(ソ)との音程は短3度(5:6)

3倍音(ソ)と5倍音(ミ)との音程は長6度(3:5)
5倍音(ミ)と8倍音(ド)との音程は短6度(5:8)
※長6度・短6度は短3度・長3度の転回でも得られます。

このようにして得られる音程は、機械的に1オクターブを12分割した平均律とは異なり、非常によく響きます。
長3度・短3度、長6度・短6度も音律1の方法で得られる長3度・短3度、長6度・短6度音程よりよく響きます。
これらの音程は純正な音程などと呼ばれます。

こうして得られる音程から作られる、長3度・完全5度の音を重ねた長3和音、短3度・完全5度の音を重ねた短3和音が調性音楽の基本となっていきます。

ドを基音とした長3和音(ドミソ)、ドの完全5度上のソを基音とした長3和音(ソシレ)、ドの完全4度上(完全5度下)のファを基音としたとした長3和音(ファラド)から、ドレミファソラシの長音階が得られます。

ラを基音とした短3和音(ラドミ)、ラの完全5度上のミを基音とした短3和音(ミソシ)、ラの完全4度上(完全5度下)のレを基音としたとした短3和音(レファラ)から、ラシドレミファソの自然短音階が得られます。

ただしこうして得られる純正律は、旋律を奏でるには不向きですし、?の和音ですらかなり濁ってきこえます。純正の和音を奏でることと、旋律や様々な和音を奏でることを両立するために、鍵盤楽器の調律士たちは試行錯誤するわけですが、それは音律2で紹介しましょう。

ちなみに、純正な完全5度と完全4度を重ねると完全8度に、純正な長3度と短3度を重ねると完全5度になります。
なお、長2度・短2度、長7度・短7度に関しては、上に挙げた音程ほどきれいに響きません。他の音程との関係で決定するようです。