100年前のカラー写真。

いま、NHK-BS1の「BS世界のドキュメンタリー」で、フランスの大富豪アルベール・カーン氏を取り上げている。

カーン氏は、証券取引で儲けた資金で、カメラマンを世界中に派遣し、72000枚のカラー写真と4000枚のモノクロ写真、100時間に及ぶビデオ映像を残したそうだ。19世紀末から20世紀初頭の話である。

彼は、当時実用化したばかりのカラー写真とビデオで、世界中の、それも主に庶民の文化・生活を記録し、市民に広く知らしめることで、他(多)文化への理解を深めさせ、国際協調を目指したのだ。うーむ、金持ちはこういう金の使い方をしてほしいものだ。

現代の我々が見る過去の映像というのは、ある時点からはモノクロ写真が中心となり、さらに古くなると、絵でしか見ることができない。それらはもちろん、当時の生活をかいま見る貴重な資料だが、自分たちの世界からは隔絶しているようにも感じる。

このドキュメンタリー(の第1回)で、初めて見た100年前のカラー写真は、鮮やかで、そして身近に感じた。いま、我々が生きているこの世界と確かにつながっているのだ、と。

また、上記のような理由で撮られた映像なので、映画やニュース、芸術目的の写真とは異なり、人々の生活が自然に記録されている。これも、この人たちは確かに生きていたのだと思える要因の一つかもしれない。

さらに、そんなこととは関係なく、このカラー写真たちは美しい。被写体も良いが、カメラマンも巧い。そして、当時のカラーフィルムの特性だろうか、灰色がかっているのに、ものすごく鮮やかな色が出ている。懐古趣味でなく、本当に美しい。

このカーン・コレクション。ドキュメンタリーでは長らく人の目に触れなかったと言われてたけど、今はどこかで見られるのだろうか。デジタル化して、ネットで見られるようになれば、カーン氏の思想を体現することにもなると思うのだがどうか。単に私の希望でもあるけど。