HDと紙。

最近、HD=High Definitionという言葉をよくきく。要は、高い解像度の映像だ。

我が家でも最近、地上・BS・CSデジタルチューナを導入し、ハイビジョン映像を楽しめるようになった(アナログ接続だけど)。

ハイビジョンの精細な画像は、たしかに一度体験してしまうと、ちょっとやめられない魅力がある。

しかし、ちょっと考えてみてほしい。

Wikipediaによれば、HD映像規格の走査線数 - 要は画面の縦の点の数 - は720〜1125くらいだ。つまり一般的なPCの画面と同程度と考えればよい。

解像度というのは、ある長さにいくつ点があるかで決まる。最近までのWindowsでは96dpi、すなわち1インチに96の点がある(ただし実測とはずれがある)。

一方で、一般的な商業印刷の解像度は300〜600dpiである。300dpiとしても、ディスプレイの3倍の解像度である。ディスプレイの点一つがさらに3×3の9つの点からできていると言えば、その細かさが想像できるだろうか。HDだなんだと騒いでも、まだまだ紙のほうが解像度は高いのである(まあ、紙では動画の表現はできないけど)。

実感としても、ディスプレイの点一つ=1ドットというのは結構大きい。マウスを1ドット単位で動かすのは難しいことではないし、ドット絵では1ドットで大きく見た目が変わる。なによりアンチエイリアシング(中間色で色の境界をぼかすこと)を行わなければ、文字や図形がギザギザに見える。

最近のMacOSやWindows VistaではClearTypeにより、文字などに限り擬似的に横方向の解像度を3倍にしているが、縦方向の解像度は変わらないため、細い横線には相変わらず弱い。例を挙げれば、スコアのような細かい楽譜の表現はまだまだ難しい。

大画面化もいいけれど、1ドットをより小さくすることができれば、映像装置はより利用の幅が拡がるだろう。

(もっともドット絵やビットマップフォントの魅力というのもなかなか捨てがたいものがある。すべてが高精細になってしまうのもちょっと寂しいファミコン世代。)