音の紡ぎ出すカタチ

大学の図書館で「ハーモノグラフ 音がおりなす美の世界」という本を借りてきた。

なんでも、19世紀にヨーロッパで流行った「ハーモノグラフ」というものがあるらしい。簡単な振り子を組み合わせた装置で、振り子の振動の差異が生み出す図像を楽しむ装置だ。振り子の動き=振動は、音の高さ、と見ることもできるため、こうした副題がついている。実際、完全五度の振動数比(3:2)が生み出す図形などが紹介されている。

著者か訳者か装丁か、あるいは全員が狙っているのか、この本はとても心をくすぐる。全編、文字と図は濃い緑のインクで印刷され、挿絵はエッチング風に書かれ(実際に古いものもある)、印刷のかすれが意図的に入れられている部分もある。そう、クラフト・エヴィング商會のような「架空の過去」の雰囲気だ。

内容もすばらしく、振動数の単純な比だけでなく、そのわずかなずれと、振動の減衰が生み出す、複雑で美しい図像は、仕組みがわからなくとも(仕組みの説明は少ない)楽しめる。

PCでハーモノグラフを描けるソフトを作りたいと思ったのだが、減衰振動の任意の時点における変位の求め方が、私の頭ではわからなかったので、あえなく断念。もうちょっとちゃんと物理と数学やってればよかった。

ところで、この本。ピュタゴラス・ブックというシリーズで他にも3冊出版されているらしい。いずれも期待できそう。まずは図書館で探してみて、余裕ができたら大人買いしよう。こういう本は買うべきだ。